
広島・福山市での8月20日~9月10日までの登熟期間中の平均気温と玄米品質の育成状況を示すグラフ。「恋の予感」は、登熟期間中の気温が特に高かった2010年でも「ヒノヒカリ」を大きく上回った(提供:農業・食品産業技術総合研究機構)
(独)農業・食品産業技術総合研究機構は9月5日、近畿中国四国地域の温暖地向けの水稲の新品種「恋の予感」を開発したと発表した。この新品種は、高温下でも優れた品質・食味をもち、多収で病原菌にも抵抗性をもつことから作付けの拡大が期待されている。
■広島県で来年度1,000ha作付け
近畿中国四国地域では、近年、イネの穂が出て米の粒が肥大・成熟する登熟期(とうじゅくき)に高温の影響で、主力品種「ヒノヒカリ」での玄米品質の低下が問題になっている。一部では九州で育成され高温に強い「にこまる」が作付けされているが、地域によっては収穫期が「ヒノヒカリ」に大きく遅れることがある。
「恋の予感」は、食味、品質、収量に優れる「きぬむすめ」と、縞葉枯病(しまはがれびょう)に抵抗性をもち、良い食味の「中国178号」を交配してできた。2002年に交配を行い、2014年5月に品種登録出願した。
「恋の予感」は、「ヒノヒカリ」とほぼ同じ時期に収穫できる中生品種。登熟期の高温に対して「にこまる」と同程度で、品質低下が生じにくい水稲。①「ヒノヒカリ」より約8%多収、②食味は「ヒノヒカリ」と同等の高い評価、②いもち病に対しては、「ヒノヒカリ」より強く、縞葉枯病(しまはがれびょう)に抵抗性を示し、育てやすい―などの特徴をもつ。
同機構によると、広島県はこの新品種「恋の予感」を奨励品種に採用する予定で、「2015年度1,000ha(ヘクタール、1haは1万㎡)、2016年度2,000haの作付けが計画されている」という。