(独)農業・食品産業技術総合研究機構の食品総合研究所と(独)理化学研究所、岡山大学は7月17日、舌で甘味をキャッチする甘味受容体が、舌の細胞内で合成されてから細胞表面の細胞膜へと移動する仕組みに、ヒトとマウスとでは違いがあることを発見したと発表した。甘味を受け取るヒトならではの仕組みがあることを示唆しており、味覚評価技術の新たな展開につながる成果という。
■甘味増強物質などの探索に活用
マウスは味を受け取る仕組みの解明や、味覚を評価する実験動物として使われており、その甘味受容体は、ヒトのそれと同様、「T1r2」と「T1r3」と呼ばれる2種類のタンパク質分子から成り、それらが結合した「T1r2/T1r3」という一つの集合体として細胞膜において機能している。
研究チームは今回、ヒトとマウスのT1r2とT1r3それぞれに目印をつけ、両タンパク質分子がどのようにして細胞膜に移動して甘味を受け取れるようになるのかを観察した。
その結果、ヒトとマウスでは甘味受容体が細胞膜へ移動する仕組みが異なり、ヒトのT1r3は単独では細胞膜に移動することはできず、ヒトT1r2が共存して初めて細胞膜に移動すること、それに対し、マウスのT1r3はマウスT1r2が存在しなくとも単独で細胞膜に移動することが分かった。
また、マウスT1r3とヒトT1r3を部分的に組み合わせた変異体を作製して細胞膜への移動を観察したところ、ヒトT1r3のうち細胞外に突き出た領域の中に、ヒトT1r3が単独で細胞膜へ移動することを阻害する部位がある可能性がうかがえたという。
このような発見は今回が初めてで、ヒト甘味受容体の細胞外の領域に、今までに知られていない細胞膜への移動のシステムが存在していると考えられるという。
今後はヒトの味覚受容体を導入した細胞を用いて味覚評価技術を開発し、甘味を代替する物質や甘味を増強する物質などの探索に活用したいとしている。