小麦のゲノム配列、6割の解読成功
―品質など特徴を決定する遺伝子12万個余りを発見
:農業生物資源研究所/京都大学/横浜市立大学/日清製粉(2014年7月18日発表)

 (独)農業生物資源研究所(生物研)は7月18日、同研究所などが参加している「国際小麦ゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)」が小麦の「チャイニーズ スプリング」と呼ぶ品種の全ゲノム(遺伝情報)の概要を解読、この麦の品質などの特徴を決める遺伝子約12万個を見付けたと発表した。

 

■有用な新品種開発につながる成果

 

 この国際コンソーシアムは、小麦のゲノム情報を染色体ごとに高精度で解読するため日米英仏豪インドなどの研究者が組織して2005年に作られ、各国の研究者が21対ある染色体をそれぞれに分担、「チャイニーズ スプリング」という品種の小麦のゲノム情報を解読している。日本からは生物研のほか京都大学、横浜市立大学、日清製粉(株)ら4者がチェコ実験植物学研究所と研究グループを組織してコンソーシアムに参加、「6B」染色体の解読にあたっている。この染色体は21対あるうちで3番目に大きく、これだけでイネの全ゲノムの2.5倍の情報量がある。

 小麦のゲノムは4種類の塩基と呼ぶ物質が約169億個繫がっており、この数は大麦の3倍、トウモロコシの7倍、稲の40倍に当たる。今回解読したのは、小麦ゲノム全体の約61%にあたり、12万4,201個の遺伝子が見つかった。国際コンソーシアムは21本の染色体の全てについて85%以上の配列を解明することを最終目標に、引き続き、共同研究を進めるとしている。

 今回は京都大学と日清製粉とチェコ実験植物研究所が染色体を単離するのに必要な小麦系の育成とDNA抽出し、生物研が塩基配列の解読を行い、横浜市立大学が遺伝子発現情報を収集した。

 今回の成果は、世界的に逼迫している小麦需要に対して、”環境変動に強く、安定生産できる小麦”や、”収穫量が飛躍的に高い小麦”などの有用な特性をもつ新品種開発につながると期待されている。この成果は米国時間7月18日付けの米科学誌「Science」にも掲載された。

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