(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は6月16日、害虫のアブラムシをよく捕食する同機構が開発した生物農薬「飛ばないナミテントウ」の販売を(株)アグリセクト(茨城・稲敷市、TEL029‐840‐5977)が同日から「テントップ」の商品名で開始したと発表した。
ナミテントウは、日本全国に生息しているテントウムシの一種で、施設野菜の重要な害虫のアブラムシを大量に捕食するが、施設内に放つと飛び去ってしまい定着しない。同機構が開発した「飛ばないナミテントウ」は、自然界に存在する様々なナミテントウの中から飛翔能力の低い個体を探し出し、それらを交配することで、遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウを実現したもので、30世代にわたって交配と選抜を繰り返し、飛翔能力のないナミテントウにしたという。
販売が始まったのは、「飛ばないナミテントウ」の2齢の幼虫で、クラフト紙製の筒の中にオガクズと一緒に入っていて、オガクズごと散布する。放たれた2齢幼虫は、周囲のアブラムシを捕食して蛹(さなぎ)になり、成虫になった後も飛び去ることなく定着し、幼虫時と成虫時の両方でアブラムシを捕食し続ける。
この生物農薬「飛ばないナミテントウ」が使えるのは、ビニールハウスなどの施設内で栽培されるアブラムシの付く野菜で、これまでにコマツナ、イチゴ、ナスなどで効果が実証されていると農研機構はいっている。
環境への影響についても、「飛ばない」性質は、生育上不利なので、ハウスなどから逃げ出してもそのまま生き残ることはまずなく、「生態系を乱す心配はない」としている。

左は、施設栽培のコマツナでの飛ばないナミテントウ2齢幼虫放し飼いによるアブラムシ防除効果。右は、被害抑制効果のグラフ(提供:農業・食品産業技術総合研究機構)