ガラス化保存した未成熟卵子から子ブタ生産
―世界で初、加温温度の最適化などで生存率向上
:畜産草地研究所/農業生物資源研究所ほか(2014年6月16日発表)

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の畜産草地研究所と動物衛生研究所、農業生物資源研究所、麻布大学は6月16日、超低温にガラス化保存したブタの未成熟卵子を培養器で体外成熟・受精・培養、受精卵を移植した借り腹から子ブタを生産するのに世界で初めて成功したと発表した。これまでは、ウシだけに可能とみられたガラス化による超低温保存だったが、ガラス化保存したブタの未成熟卵子の加温温度の最適化で加温後の卵子の生存率などが向上、今回の成果を得た。

 

■受精卵発生率が1.6倍に

 

 家畜の精子や卵子などを、高濃度の凍結防御剤を含むガラス化液でマイナス196℃の液体窒素温度に急速冷凍し、保存するガラス化保存法は従来、ウシにしかできなかった。ブタは生殖細胞の超低温保存が難しく、ことに卵子は低温損害を受けやすく、さらにガラス化保存した卵子を元に戻す加熱後の生存率が低く、ガラス化保存した未成熟卵子を使った子ブタ生産は世界的にもこれまでなかった。

 今回研究グループは、未成熟卵子加熱温度の最適化を図り、加熱温度を従来の38℃から42℃に高め、加熱後の未成熟卵子の生存率が従来の67%から87%へアップした。さらに、この温度で加熱した卵子を39℃の培養器で体外成熟・受精・培養したところ、加熱設定温度38℃の場合に比べて受精卵発生率が1.6倍向上、それだけ多くの移植可能胚を作れることが分かった。

 研究グループは体外受精5日目の受精卵を雌ブタの子宮に移し、借り腹で胎児に育てて、ガラス化未成熟卵子由来の子ブタを生ませた。こうしたブタの未成熟卵子のガラス化保存からの子ブタ生産が成功したことで、卵子も細胞レベルで遺伝資源として保存可能なことを立証。生物の遺伝的多様性維持のため、生体に比べて遙かに効率的で防疫上のリスクが少ない遺伝資源の安定的保存にも繫がるとされる。

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