(独)物質・材料研究開発機構は6月18日、目的に応じた摩擦係数を持つ「摩擦材料」を極めて効率よく作り出せる手法を創出したと発表した。この手法を用いると、摩擦を減らすコーティング膜などの組成や結晶構造・配向の情報を最小限の実験で取得でき、表面の結晶配向を摩擦だけで変化させることができる。材料表面の位置に応じて摩擦係数を制御するといった革新的技術への応用も期待できるという。
■結晶構造・配向の情報を短時間で取得
モーターや発電機などの摩擦を低減したり、車のブレーキ性能を上げたりするなどの摩擦力制御は、ますます重要な課題になっている。摩擦力を制御する材料コーティング技術はその有力な手法だが、コーティングは結晶配向の違いによって摩擦特性が大きく変化するため、必要とする摩擦特性を持つ材料を得るには組成や結晶構造・配向などの諸条件を変えた膨大な数の実験が必要で、開発に長期間を要している。
研究チームは今回、加える荷重、圧子材料、こする(摺動)回数といった、摩擦特性を調べるための摺動条件をいろいろ変化させ、摺動痕を微小領域ごとに結晶構造解析したところ、それらの条件変化により結晶配向を変えられることを見出した。また、その結晶配向に対応する場所の摩擦係数も合せて測定することにより、摩擦係数と結晶配向との相関を1回の実験で明らかにできることを突き止めた。
この結果、必要とする摩擦係数を持つ結晶構造・配向の情報を短時間で取得することが可能となるとともに、材料表層部の結晶配向を単に摩擦だけで特定の結晶配向に変化させることができるようになった。
これらの成果は目的の摩擦係数を発現させるツールとなるもので、今後の摩擦材料の研究開発に大きな可能性を広げることが期待されるという。