
新技術で作製した長尺マグネシウム合金細管の外観(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所と軽金属加工の不二ライトメタル(株)は6月18日、マグネシウム合金で長尺細管をつくる技術を開発したと発表した。押出し成型により肉厚誤差は最大でも4%以下に高精度化でき、血栓で狭くなった血管を拡張する冠動脈治療に使われるステントなど高い信頼性が求められる医療用素材にも使えるという。
■従来法より少ない工程
マグネシウム合金は実用金属の中では最軽量で防振性にも優れている。また、毒性が低く生体内で分解するという特性もあり、医療用素材としても期待されている。
押出し成型では軟らかくした金属を特殊な金型に流し込んで押し出し、中空の細管を作るが、新技術はこの金型の形状を工夫、金属の流れが均一になるようにした。この結果、塑性変形しにくく高精度加工が難しいとされていたマグネシウム合金で精度の高い細管をつくることに成功した。
実験では各種のマグネシウム合金を使って肉厚が0.2mmから0.4mmの細管を試作した。このうち、特に生体用マグネシウム合金を使った直径4mm、肉厚0.3mmの細管では、肉厚誤差が2%以下という高精度化が実現できた。細管をレーザーで加工してメッシュ状にして作られるステント用素材として十分使用できるという。
長尺細管の成形加工では一般に押出し加工が有効とされているが、マグネシウム合金はその結晶構造から押出し加工に必要な塑性変形性が低く、これまで長尺細管を精度よく作ることは難しいとされていた。
開発した新技術について、研究グループは「合金組成を問わず、従来手法に比べて少ない工程で特性の安定した長尺細管が作れる」として、高い精度と信頼性が欠かせない医療用部材作りへの活用を期待している。