ネムリユスリカの乾燥幼虫、宇宙でも蘇生
―乾燥状態からの昆虫の変態を初めて確認
:農業生物資源研究所/ロシア科学アカデミーほか

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上は、ネムリユスリカの乾燥幼虫が入った観察容器。下は、ネムリユスリカの幼虫(左)と蛹(提供:農業生物資源研究所)

 (独)農業生物資源研究所は4月15日、ネムリユスリカの乾燥幼虫が宇宙の微小重力下で蘇生し、蛹(さなぎ)や成虫へと変態したことが観察されたと発表した。乾燥状態から蘇生した昆虫の変態が微小重力下でも可能なことが確認されたのはこれが初めてという。

 

■注水3時間後に蘇生

 

 実験は国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で若田光一宇宙飛行士が2月に実施した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)とロシア科学アカデミー生物医学問題研究所の共同研究プロジェクトに農業生物資源研が生物試料を提供し、ロシア・カザン大学も研究協力した。
 ネムリユスリカはアフリカの半乾燥地帯に生息するユスリカの一種で、幼虫はカラカラな乾燥状態(含水量3%)にも耐え、水に戻すと短時間で蘇生する。このような極限的な乾燥耐性を持つ昆虫はネムリユスリカが唯一とされている。
 研究チームはネムリユスリカが宇宙の無重力環境下でも乾燥に耐えて蘇生するのか、遺伝子発現に変化が起きないか、などを探る研究を計画、ネムリユスリカ乾燥幼虫100個体を入れた観察容器を補給船でISSに運び上げ、ISS滞在中の若田宇宙飛行士が容器に注水して蘇生反応などを調べた。
 その結果、注水3時間後に蘇生の様子がビデオカメラに収められ、ほとんどの幼虫の活動が観察された。2週間後には100個体のうち7個体が蛹になり、うち1個体は成虫に羽化していることが観察された。
 今回の実験では、微小重力下で発現したRNA遺伝子を固定する処理も行っており、遺伝子変動パターンを解析することによって微小重力に対する生体反応を知ることができるという。

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