突然変異の原因物質を突き止め
―酸化したDNAが子孫に伝わる遺伝子を変化させる
:理化学研究所/九州大学/長浜バイオ大学

 (独)理化学研究所と九州大学、長浜バイオ大学の研究グループは4月17日、子孫に受け継がれる生殖細胞の突然変異が遺伝子DNAの一部が酸化することによって起きることを突き止めたと発表した。DNAを構成する4種類の塩基の1つ「グアニン」が酸化した物質が、ヒトやマウスなど哺乳類の突然変異の原因になるという。治療の難しい遺伝子病が新たに発生する仕組みや、人によって特定の病気のかかりやすさが異なるなど遺伝的な多様性が生まれる原因の解明などに役立つと期待している。

 

■突然変異発生率は18倍に

 

 病原体の感染や放射線、化学物質などによって細胞がストレスを受けるとDNAが酸化、これが突然変異の原因の一つであることはこれまでも知られていた。しかし、こうした外部要因ではなく、加齢などの内部要因で起きる突然変異にどのような因子が影響しているかは未解明だった。
 そこで研究グループは、ヒトやマウスがもともと持っている、DNAを酸化から守る代表的な遺伝子に注目。それが働かないように遺伝子改変した雌雄のマウスを作った。この遺伝子改変マウスは、DNAを構成する4種類の塩基の1つ「グアニン」が酸化してできる分子「8‐オキソグアニン」を除去・修復できなくなった。
 この雌雄のマウスを交配させたところ、8‐オキソグアニンを除去・修復できない性質が生殖細胞を通じて子孫に受け継がれた。子孫は100匹以上にまで増えたが、この突然変異が原因と考えられる水頭症やがんなど様々な異常を持った個体が現れ、子孫は8世代で途絶えてしまった。
 そこで、子孫の中から突然変異が最も蓄積していると考えられる3匹のマウスを選び、DNAの塩基配列を分析したところ、世代あたりの突然変異発生率が遺伝子改変していないマウスの約18倍あった。これらの変異の99%は8‐オキソグアニンを原因としたもので、そのうち約60%が遺伝子の機能に影響を与えていることがわかった。
 これらの結果から、研究グループは「同じ哺乳類であるヒトでも、DNAの酸化は自然かつ恒常的に起きており、それが修復されないとがん発生や遺伝的変異の原因になることが予想される」とみている。

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