房総半島沖で通常とは異なる地殻変動を検出
―原因はスロー地震(スロースリップ)と推定
:防災科学技術研究所/国土地理院

 (独)防災科学技術研究所と国土交通省国土地理院は1月10日、房総半島沖で通常とは異なる地殻変動(非定常地殻変動)を検出したと発表した。両機関とも「スロー地震」(スロースリップ)と呼ばれる現象が起きたと推定している。

 

■発生間隔は27カ月と短期間

 

 防災研によると、房総沖スロー地震は、陸側プレートとその下に沈み込むフィリピン海プレートの境界が約1週間に10cm程度ずれ動く現象で、これ自体は地震の揺れを起こさない(地震波を出さない)ので地震計で記録されることはない。しかし、これまで観測された房総沖スロー地震には最大マグニチュード4から5程度となる地震を含む群発地震を伴うという特徴があり、これらは房総沖スロー地震によって誘発されていると考えられるという。
 今回は1月2日ころから地震が群発的に発生しはじめ、これと同期して非定常地殻変動が、高感度地震観測網に併設された高感度加速度計により検出された。過去の活動と比較すると、今回は過去の活動域の北端周辺で発生し、空間的広がりは小さいのが特徴という。地殻の傾斜変動量もこれまでのところは小さく、2007年、2011年に起きた房総沖スロー地震の際の約1/2という。
 また、同日の国土地理院の発表によると、「ゆっくり滑り(スロースリップ)現象」によるものと推定される地殻変動が電子基準点(GPSを利用した連続観測点)の観測データにより検出された。検出されたこの非定常地殻変動からプレート境界面上の滑りを計算したところ、房総半島沖で最大6cmの滑りが推定されたという。
 国土地理院は電子基準点の観測データがある1996年以降、1996年5月(最大滑り量約8cm)、2002年10月(同約13cm)、2007年8月(同約12cm)、2011年11月(同約20cm)にスロースリップの発生を確認しているが、発生の間隔はそれぞれ77カ月、58カ月、50カ月だったのに対し、今回は27カ月と、観測以降最も短かった。
 スロー地震は地震のメカニズムを知る上でカギとなる現象と目されており、関係機関は今後の動きを注目している。

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