(独)農業環境技術研究所は1月9日、世界の農業環境の変化を専門知識のない一般の人でも一目で理解できるシステムを構築、インターネット上に公開したと発表した。過去14年間に地球観測衛星がとらえた膨大な画像データをもとに作成したもので、東南アジアにおける水稲3期作やエビ養殖地の拡大、津波や洪水による被害の様子などが自分の目で確認できるという。
■農業災害や環境研究に利用
このシステムは、農環研のホームページからも利用できる。公開したのは、「“世界の農業環境”閲覧システム(URL:http://gaenview.dc.affrc.go.jp/hp_public/html/)」。米航空宇宙局(NASA)が打ち上げた2機の地球観測衛星に搭載した可視・赤外域の分光放射センサー(MODIS)が2000~2013年までにとらえた画像データを加工、地図データと重ねて世界各地の農業環境の時間的変化を検索・閲覧できるようにした。
衛星画像のほか、農環研が作製した「ベトナム・メコンデルタの土地利用分類図」や「インドシナ半島における時系列洪水マップ」、国際機関が配信している「農業関連地図」も重ねて閲覧可能という。
このため、世界的なニュースになった東日本大震災による水田の津波被害やタイの洪水など、農業災害の全体像を理解するのに役立つ。小中学校や高校の理科・環境教育の副教材として使えるほか、大学や研究機関における環境研究の参考情報としても利用可能だ。
農環研は「将来を担う若い世代が絶えず変化し続ける世界の農業環境に興味を持つことで、世界の食料・環境問題を考えるきっかけにしてほしい」と期待している。

“世界の農業環境” 閲覧システム 「2画面モード」 での表示例。写真は、宮城県仙台空港付近。左は、震災年・秋 (2011年9月14~21日)の合成画像。右は、2年後の同時期の画像。震災直後は、がれきが散乱していたが、農地復旧が進み 「秋の実り」 を確認できるようになった(提供:農業環境技術研究所)