高エネルギー加速器研究機構とJ-PARCセンター、(独)日本原子力研究開発機構は12月17日、共同で運営する東海村(茨城)の「J-PARCハドロン実験施設」で平成25年5月23日に発生した放射性物質漏えい事故について、事故時に損傷したと考えられる金(きん)でできた金標的の観察結果を発表した。
ハドロン実験施設は、シンクロトロン(円形加速器)から取り出した陽子ビームを標的に照射し、生成したK中間子などの二次ビームを使って素粒子物理などの実験を行う施設。
J-PARCハドロン実験施設は、縦と横が6mm、長さが66mmの金標的にシンクロトロンからの陽子ビームを当てて二次ビームを作っている。
これまでの調査では、5月23日の事故はシンクロトロンの陽子ビーム取り出し電磁石の誤動作により、設計想定をはるかに超えた瞬間強度の陽子ビームが金標的に照射され、それによって金標的が損傷し、飛散した放射性物質が施設外に漏えいしたと結論している。
ファイバースコープを使って行った金標的の観察では、標的後方に穴があき、金標的にあるスリット部分から金が漏れ出たような痕跡や、標的を納めた台座底面に金色に光る飛沫のような跡が見つかった。金の沸点(2,856℃)を超える温度にまで達し、金標的の一部が気化して急激な体積膨張が起こり、液化した金の一部を押し出したと考えられるという。今回の観察は、これまでのシミュレーション結果による検討結果とほぼ同様なものとなっているとしている。
No.2013-50
2013年12月16日~2013年12月22日