ケイ素ラジカルを電極材に用いた2次電池を開発
―希少金属使わず高速充放電と高いサイクル特性達成
:筑波大学/豊田中央研究所

 筑波大学は12月19日、(株)豊田中央研究所と共同で、ケイ素ラジカルと呼ばれる化合物を電極活物質に用いた二次電池(蓄電池)の作製に世界で初めて成功したと発表した。リチウムやコバルトなどの希少金属を使わずに、高速充放電と高いサイクル特性を持つ二次電池が作れることを示した。電池開発に新たな道が開けたという。

 

■世界初、電池開発に新たな道

 

 現在、パソコンやハイブリッド車などに使われている二次電池の電極には、資源問題などを抱えたリチウムやコバルトなどの希少金属が用いられている。
 研究チームが開発したのは、希少金属の代わりに典型元素ラジカルと呼ばれる化合物を電極に用いる技術。典型元素は一般的には周期表13族から17族の元素を指し、ケイ素やゲルマニウム、スズ、鉛、リン、イオウ、塩素など多くの身近な元素を含む。ラジカルはペアを構成していない不安定で反応性の高い不対電子を持つ分子。
 研究チームは典型元素ラジカルの特性評価を踏まえ、今回ケイ素ラジカルを選択し、ケイ素ラジカルと導電助剤カーボンブラックから成る合材を負極に、グラファイト(黒鉛)を正極に、イオン性液体を電解液に用いた全有機物系の二次電池を作製した。
 その特性を調べたところ、従来の二次電池に匹敵する高速充放電と高いサイクル特性(充放電の繰り返し)が認められ、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池と、パワー密度の高いスーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサー)の両特性を併せ持つことが分かったという。
 ラジカル電池の開発はこれが世界で初めてで、希少金属への依存度が低く、環境負荷が小さく、安全性の高い電池技術の開発を目指す新たな道が開けたとしている。

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