
電荷分離の際に0.4eVのエネルギー損失がある場合の光電変換効率の理論限界と太陽電池が吸収できる光エネルギーの最小値(光吸収端エネルギー)との関係。赤線は無機太陽電池の理論限界、青線は有機太陽電池の新しい理論限界(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所は12月20日、今後の発展が期待されている「有機太陽電池」の光を電気に変える光電変換効率の理論的な限界(理論限界)がシミュレーションの結果、約21%であることが判明したと発表した。
■現実と理論のギャップ解明へ
現在使われている太陽電池の主流は、無機半導体のシリコンで作った無機太陽電池。その光電変換効率の理論限界は、約30%と米国のショックレー(ノーベル物理学賞受賞者)らが1961年に発表している。
それに対し、光の吸収と電流の発生に有機化合物を使うものを有機太陽電池といい、軽くて、柔らかく、曲げられるなどシリコン製にない特徴を持ち、最大の弱点だった光電変換効率の低さも近年急速に向上し、10%を超える報告が出るまでになってきている。
このため、有機太陽電池の光電変換効率は、どこまで高くできるのかに関心が集まっている。
産総研が、つくば市(茨城)にある同研究所の太陽光発電工学研究センターを中心にシミュレーションを進めたところ、太陽電池が吸収できる光エネルギーの最小値が1.5eV(電子ボルト)、光の波長で赤外線領域の827nm(ナノメートル、1nmは100万分の1mm)の場合に最大値の21%になることが分かったという。
産総研は、「理論的に計算された限界値21%は現状の(有機太陽電池の)効率である10~12%より十分高く、今後は理論限界との差の要因を解明し、高効率化のための課題の抽出とその解決へと研究開発を展開していく予定」といっている。