単層CNTを金属型・半導体型に高効率・高純度分離
―各タイプの高純度化で用途開発加速へ
:産業技術総合研究所/新エネルギー・産業技術総合開発機構/単層CNT融合新材料研究開発機構

 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構と技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構、(独)産業技術総合研究所は12月19日、単層カーボンナノチューブ(CNT)に混在する金属型と半導体型のCNTを高純度、高収率で分離・回収できる技術を開発したと発表した。用途開発を促進するため、今後、分離後の高純度サンプルを国内企業に無償で提供するという。

 

■分離後のサンプルを企業に無償提供へ

 

 カーボンナノチューブは炭素原子でできた超微細な筒状物質で、筒が一層なのを単層カーボンナノチューブ(SWCNT)といい、炭素原子の並び方によって金属型と半導体型がある。
 金属型SWCNTは電気をよく通し、平面状に成膜することにより液晶ディスプレーや太陽電池パネル用の透明電極の作製などが期待されている。半導体型SWCNTはナノメートルサイズのトランジスタやフレキシブルの薄膜トランジスタなどの開発が期待されている。
 現状では、電気的性質の異なるこれらのSWCNTを別々に合成する効率の良い方法はなく、合成後のSWCNTを分離する方法が採られているが、純度などの面で改良が必要とされていた。
 研究チームは先に、アガロース(海藻に含まれる多糖類で寒天の主成分)をゲル化して円筒容器に詰めたアガロースゲルカラムを用いて大量・安価に分離す方法を開発しているが、今回、SWCNTとゲルの吸着反応をpHや溶質濃度によって制御することで、金属型と半導体型SWCNTの分離工程の高効率化を実現した。これにより、純度と回収率の飛躍的な改善がはかれたという。
 分離したSWCNTは国内企業の要望に応じ、数十mgの単位で無償提供するという。

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図

上は単層CNTのゲルへの吸着力のpH依存性。色が濃いほど吸着力が強い。金属型は弱酸性下で、半導体型は強酸性下で吸着力が弱まる。下は、ゲルに吸着する半導体型単層CNTの純度指標と収率指標のpH依存性グラフ。pH6付近では純度が高く、pH8-10では収率が高い。pHを調整することで、純度と収率を制御することが可能に(提供:産業技術総合研究所)