(独)産業技術総合研究所は10月17日、段ボールなど蜂の巣状の構造を持つ紙製のペーパーハニカムを低コストで高性能・高機能化する技術を開発したと発表した。表面をケイ素の酸化物である多孔質シリカ被膜で覆って強度や耐水性、難燃性を向上させたほか調湿機能も実現した。水処理用の材料や調湿機能を活かした建材など、新たな分野への応用が広がると期待している。
■5倍の圧縮強度、1週間の流水にも変形なし
開発したのは、ペーパーハニカムの表面をケイ素酸化物である多孔質シリカの被膜で覆う技術。紙の基材にケイ酸ナトリウムなどの水溶液を塗布した後、一定の湿度と温度を保った密閉容器内で二酸化炭素にさらす。この処理によって、基材の表面に無数の微細な孔を持つ多孔質シリカの被膜が形成される。
実験では被膜処理をした縦5cm、横4cm、厚さ1.5cmの試験片を試作、未処理の試験片との比較試験を試みた。その結果、試験片を押しつぶす圧縮試験では、未処理の試験片が0.85MPa(メガパスカル;力の単位)の力で変形したのに対し、被膜処理をした試験片はその約5倍の4.4 MPaまで変形しなかった。
また、被膜処理をした試験片は一週間流水にさらしても形状変化は見られず、燃焼試験でもわずかに変色した程度だった。これに対し、被膜処理しなかった試験片は30分程度流水にさらすだけで形が崩れ、燃焼試験でもすぐに燃え出した。
さらに周囲の湿気を吸い取る吸湿試験では、未処理の場合に比べ約5倍の吸湿率を記録、調湿機能を持った建材などとして優れた性能を持つことがわかった。被膜形成時の処理条件を変えれば、多孔質シリカ被膜の膜厚や微細な穴の中まで含めた表面積を制御できるため、より高い調湿機能を実現できる可能性もある。
従来、樹脂や無機物を多量に混合したり高温処理したりしてペーパーハニカムを高性能化する試みはあったが、処理工程の煩雑さやコスト高が問題とされていた。産総研は今後、新技術を用いたペーパーハニカムの特性を活かした応用開発を目指す。

上は一般的なペーパーハニカム基材(左)と多孔質シリカで被膜した基材(右)の断面。左は細いセルロース繊維がけば立った状態でハニカムの接点は剥がれやすくなっている。右は被膜されてハニカムの接点が強固に接着。下は処理前基材と多孔質シリカ被膜基材の圧縮試験の結果(提供:産業技術総合研究所)
