
産総研北海道センター内に作られた完全密閉型遺伝子組換え植物工場(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所(産総研)は10月17日、生物プロセス研究部門植物分子工学研究グループがホクサン(株)と(社法)北里研究所(現・北里第一三共ワクチン(株))と共同開発した犬の歯肉炎軽減剤が10月11日付けで動物用医薬品として製造販売が認可されたと発表した。この薬は、産総研北海道センターの遺伝子組換え植物工場で栽培した、イヌインターフェロンαを産生する遺伝子組換えイチゴの果実を原料としている。
■医薬品生産のプラットホーム実証
産総研植物工場は、遺伝子組換え技術を利用して植物で医薬品原材料のような付加価値の高い物質を作るため、平成19年(2007年)1月に設置された。この工場では、太陽光の代わりに人工光を用い、作られた遺伝子組換え植物が外部に拡散しないように完全密閉されている。このため、同工場では遺伝子組換え植物を気象や立地条件にとらわれずに計画的・安定的に栽培できる。
このような遺伝子組換え植物を原料に用いた動物用医薬品の開発は世界に先駆ける成果で、産総研では、同植物工場が植物を使った医薬品生産のプラットホームになることが実証されたとしている。北海道センターにはこの植物工場の技術を社会に橋渡しする施設として、(公財)北海道科学技術総合振興センターが運営するグリーンケミカル研究所がある。産総研では今後、この植物工場とグリーンケミカル研究所が進める研究開発で、より多くの医薬品原材料やジャガイモなどの生産作物も取り上げて行く方針。