屋根雪と地上雪の連結が家屋倒壊の大きな原因
―荷重は17%増大し屋根を引きずりおろす力に
:防災科学技術研究所

 (独)防災科学技術研究所は5月21日、大雪による家屋倒壊の原因解明実験を行い、屋根に積もった雪と地上の積雪との連結が屋根にかかる荷重を増大させ、それが家屋倒壊を引き起こす大きな原因であることを突き止めたと発表した。家屋倒壊を防ぐには屋根の雪下ろしをするだけではなく、軒先の除雪をし、屋根雪とつながらないようにすることが大切だとしている。

 

■縮尺1/20の家屋模型作り人工降雪で実験

 

 ここ3冬期、日本海側では大雪による家屋倒壊被害が多発しているが、多くの倒壊事故はその場所の最大積雪深が出現してからしばらく後に集中発生している。防災研はこの原因解明を目指し、雪氷寒冷環境を再現できる雪氷防災実験棟の低温実験室内に縮尺1/20の家屋模型を作り、人工降雪装置により大雪を再現、気温を変え一時的に融雪状態を作り出したりして、屋根にかかる荷重の変化を測定した。
 その結果、積雪が増えて屋根雪と地上雪とがつながると屋根に掛かる荷重は増大、17%の上昇を観測した。これは、地上雪の一部が連結部を通して屋根雪を引きずりおろそうとする力が働くためという。
 最大積雪深の時より少し遅れて出現する屋根雪荷重最大時に屋根雪と地上雪がつながっていると、より多くの荷重が加わるため、この時期の倒壊事故多発が考えられるという。
 次に実験室の温度をいったんプラス5℃に上げて雪面付近を融解させた後、再びマイナス5℃に下げて融解積雪層を凍結させるという、いわゆる暖気通過後に寒気襲来を模した実験をしたところ、融解した積雪層の凍結に伴い屋根荷重が急激に増加した。
 これは、積雪の表面に丈夫な層(クラスト)が形成され、連結部の強度が大きくなるとともに、地上雪の及ぼす影響範囲が拡大するためで、家屋倒壊が融雪期に入ってからも発生するのはこのメカニズムによると考えられるという。
 これらの結果から防災研は雪下ろしとともに軒先の除雪、連結部の切り離しを促している。

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矢印が屋根雪と地上雪がつながった場合の積雪表面の動き(提供:防災科学技術研究所)