結晶シリコン太陽電池の出力低下現象を抑制
―低コストで簡便に対策を施す新技術を開発
:産業技術総合研究所/サスティナブル・テクノロジー

 (独)産業技術総合研究所とサスティナブル・テクノロジー(株)は5月22日、結晶シリコン太陽電池が、ある特定の条件下で大幅に出力低下するのを抑える技術を開発したと発表した。低コストで簡便に対策を施せることから、技術の最適化を急ぎ、早期に実用化したいとしている。

 

■酸化チタン系複合金属化合物の薄膜をコーティング

 

 メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電システムの急速な導入に伴い、近年、PID現象と呼ばれる太陽電池モジュール・システムの急速な出力低下現象が海外で報告されている。
 この現象は、特定の条件下で太陽電池モジュールに高電圧がかかることによって起こるもので、部材の種類、高温、高湿、システム電圧などの条件が関与していると考えられている。長期間の経年変化とは異なり、数カ月から数年の比較的短期間で起こりうるとされ、メカニズム解明と有効な対策技術の開発が求められている。
 研究チームは今回、太陽電池モジュールに用いられているガラス基板に酸化チタン系複合金属化合物の薄膜をコーティングしてPID現象を抑制する技術を開発した。

標準型モジュールと対策済みモジュールのPID試験前後の電流電圧特性(提供:産業技術総合研究所)

 新技術は、原料を含む溶液をガラス基板表面上にコーティングして乾燥、加熱焼成して製膜する。PID現象の主原因とされるナトリウムイオンなどがガラス基板から拡散するのを防ぎ、太陽電池モジュールの出力低下を抑える。
 特性を評価したところ、薄膜をコーティングしていない標準型モジュールはPID試験(模擬的にPID現象を起こさせる試験)後に変換効率が15.9%から0.6%へと大幅に低下したのに対し、酸化チタン系複合金属化合物薄膜をコーティングしたモジュールでは、効率の低下はごくわずかだったという。
 新技術は原料が比較的安価で製法が簡易、低温で焼成・製膜できる、といった特徴があり、低コストPID対策の有望な候補の一つとして期待できるという。

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