129億年前の宇宙にスターバースト銀河を発見
―「HFLS3」銀河、最古で最強の星形成活動
:宇宙航空研究開発機構/米・コーネル大など

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月24日、同機構の宇宙科学研究所の松原英雄教授らの国際共同研究チームが、129億年前(”ビッグバン”=宇宙誕生の8億8,000万年後)の初期宇宙の「HFLS3」と呼ばれる銀河が、これまで見つかった中で最古・最強の”スターバースト”(星生成)銀河であるのを発見、その成果が英科学誌「ネイチャー」4月18日号に掲載された、と発表した。この発見は宇宙誕生初期の星生成活動の多様化を示すもので今後、さらなる研究の発展が期待される。

 

■天の川銀河の2,000倍超の新しい星形成

 

 この研究では米国のコーネル大学やカルフォルニア工科大学などからなる研究グループがハーシェル宇宙望遠鏡による波長0.1~1mmほどのサブミリ波の観測で見つけた天体の中から、非常に遠方の明るい銀河を選出し、専用の分光装置や複数の電波干渉計で詳しく調べた。JAXA宇宙科学研究所は、これに用いたZ-Specと呼ぶミリ波広帯域分光装置の開発に大きな役割を果たしている。その結果、この天体が高速で地球から遠ざかるために起きる発光波長が長くなる現象を計算するなどから、この「HFLS3」が地球から129億光年離れた銀河と分かった。
 同時に行った種々の観測や計算などから、この銀河では今の天の川銀河の2,000倍以上の割合で新しい星が生まれており、重元素を含む星間物質量は天の川銀河の40倍に達することが判明した。これほど大量の重元素を含む星間物質があるということは、そこで大量の星が生まれる一方、超新星爆発などで重元素が宇宙空間に撒き散らされていることを意味する。129億年前の宇宙では、これほど強烈な”スターバースト”が行われていたことになる。
 このような星生成銀河が宇宙誕生の初期に何故存在したのか、それがどう変化してきたのか。宇宙全体での年間星形成率は100億年ほど前には現在の数十倍あったが、それ以前は減っているというのが、最近の研究で明らかになっている。今回の成果は、これに一石を投じる。これを機に今後、JAXAを中心に検討が進んでいる次世代の赤外線天文衛星Spicaなどによる解明が進むと期待される。

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