
アミロイドペプチド自己組織化によるナノワイヤ形成の模式図(提供:物質・材料研究機構)
(独)物質・材料研究機構は4月24日、北海道大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者と共同で、水溶液中で自発的に集合してナノワイヤ構造を形成する性質を持ったアミロイドペプチドの自己組織化制御手法「混合SCAP法」を開発、その制御力を利用して多彩な機能を持つナノワイヤの作製に成功したと発表した。ナノ電子デバイスの開発などに大きく貢献する成果という。
■3つのアミノ酸を付加
アミロイドペプチドは、アルツハイマー病の原因分子と考えられている神経変性疾患の脳内蓄積物質で、自己組織化(自発的な集合・組織化)により線維状構造物のナノワイヤを形成する性質がある。ペプチドには様々な分子を結合(修飾)できることから、アミロイドペプチドに機能分子を修飾して自己組織化させれば、導電性や触媒活性など各種機能を持つ様々な機能化ナノワイヤを作れる可能性がある。ところが、修飾した機能分子がナノワイヤ形成を阻害してしまい、導入できる機能分子はこれまで極めて限定的だった。
研究グループは修飾分子の影響を除くため、末端に3つのアミノ酸を付加した新たなアミロイドペプチド(SCAPペプチド)を設計し、複数のSCAPペプチドを混合することで効果的に自己組織化をコントロールする混合SCAP法を開発した。
さらに、機能分子と特異的に結合するプローブ分子をSCAPに修飾したP-SCAPを合成、機能化ナノワイヤを非常に効率的に作製することに成功した。この手法を基盤に、様々な無機物性ナノワイヤの作製法も確立した。
こうした新技術は汎用性が高く、新規の物性を持つナノワイヤの創製をはじめ、ナノデバイス分野での多彩な展開が期待できるという。