熱と光で繰り返し書き込み・消去ができる
―相変化型の光記録材料を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は4月22日、光と熱によって繰り返し情報の書き込み・消去が可能な新しい光記録材料を開発したと発表した。コールタールから得られる物質を原料にした有機材料で、光と熱の作用によって分子が規則正しく並んだ結晶状態と、ガラスのように不規則なアモルファス状態のどちらにでも自由に制御できる性質を利用して記録する。溶液塗布やプレス方式で記録媒体が製造できるため、大型装置の導入などが必要なく低コスト化にも役立つと期待される。

 

■製造に大型装置不要、低コスト化も

 

 開発したのは、コールタールから得られるアントラセンと呼ばれる物質の分子構造の一部を変えた有機材料。試薬として入手可能な出発物質から2段階の簡単な反応で合成できるという。
 アントラセンは紫外線を照射すると分子が2つ結合した「二量体」を形成するが、200℃以上に加熱すると再び元に戻る性質がある。新材料は、このアントラセンの化学構造の一部を変えたもので、150℃以上に加熱しながら紫外線を照射するとアントラセンと同様に二量体ができる。
 ただし、通常のアントラセンとは異なり、室温に戻したときにこれらの分子が不規則に並んだまま固定されたアモルファス状態になる。その結果、光の反射率や複屈折の性質が変わり、情報として記録できる仕組みだ。一方、いったんアモルファスになっても、200℃以上に加熱すれば再び二量体が壊れて結晶状態に戻り、情報の消去も可能。
 実験では、試作した18mm角の薄膜材料を使い紫外線でパターンを書き込んで読み取れるかどうかを試みた。薄膜の上に2枚の偏光板を重ねたところ、紫外線を当てた部分だけ複屈折で光の透過度が変わり、パターンがはっきり浮かび上がった。さらに、200℃以上に加熱すると、このパターンが消去できることも確認できた。
 産総研は今後、さらに書き込み・消去の繰り返し特性の向上や微細パターンの書き込みができるよう改良を進め、実用化を目指したい考えだ。

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相変化により記録したパターンを消去して別のパターンを記録できる。(a)は一度目のパターンの書き込み、(b)は薄膜(a)を200℃に加熱しパターンを消去したところ、(c)は、薄膜(b)に別のパターンを書き込んだもの(提供:産業技術総合研究所)