筑波大学は12月9日、次世代の超省エネルギーメモリーの最有力候補である抵抗変化型メモリー「ReRAM」の動作機構を電子レベルで解明したと発表した。これにより、超省エネメモリー実現に向けた研究開発が飛躍的に進展することが期待できるとしている。 筑波大計算科学研究センターの研究グループが、同センターのスーパーコンピューターなどを使い、計算科学的な手法で明らかにした。 ReRAMは、常にメモリーに通電していなくてもデータの記憶が消えない「不揮発性」のメモリーで、消費電力が少なく、構造的に高密度化が可能なことや、高速化できることなどから次世代の重要なメモリー素子と考えられている。 基本的な構造は、電圧を加えると電気抵抗が変化する酸化物を2枚の金属電極で挟みこんだ形。電圧のかけ方で起こる酸化物の電気抵抗の変化を利用している。電極に電圧を加えると、酸化物の中の酸素原子の抜けた穴(酸素空孔)が集まって2つの電極の間に電流の通り道を作り(低抵抗状態)、電圧の向きを変えると、電流の通り道が切断される(高抵抗状態)。 ところが、これまでReRAMがなぜ動くのか、ということが分かっていなかった。研究グループは、量子論に基づく計算科学的な手法を使ってシミュレーションを行った。 その結果、酸化物の酸素空孔はプラスの電荷を帯びており、プラス同士が反発して酸素空孔は集まれず、電圧がかかると酸素空孔に電子が注入されるため集まることができるようになって、電流の通り道が形成され、電子を除去すると、空孔はバラバラになることを突き止めた。電圧による電子注入・除去で「イオン化した酸素空孔」と「イオン化していない酸素空孔」の凝集・分散により電流の通り道の形成・崩壊を制御できることが分かった。 研究グループは、このReRAMの特性を大きく向上させるために、これまで使われてきた酸素空孔が発生しやすい材料(例えばハフニウムと酸化ハフニウム)に、空孔が発生しにくい材料(例えば酸化アルミニウム)を組み合わせた多層構造のReRAMを作り、電流の通り道の形状を高度に制御することを提案している この研究成果は、12月11日(日本時間)に米サンフランシスコで開催された国際電子デバイス会議で発表された。
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筑波大の研究グループが提案した多層構造ReRAMでの伝導経路の形成・崩壊(提供:筑波大学) |
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