（独）物質・材料研究機構は12月6日、熊本大学との共同研究で、磁石の強さを表す磁気モーメントが結晶粒界で上昇する現象を発見したと発表した。新たな磁性材料の開発に向けた設計手法の手掛かりになるという。
　鉄やアルミなど身の回りにある多結晶金属材料は、結晶粒と呼ばれるひとかたまりの結晶がたくさん寄り集まってできており、この結晶粒同士の境界を結晶粒界と呼んでいる。
　結晶粒界は、多結晶材料の特性を決める重要な因子の一つで、結晶粒界と磁気特性との関連性については、結晶粒界における磁気モーメントの局所的上昇が科学計算（第一原理計算）で予測されているが、実験的には明らかになっていなかった。
　研究チームは、結晶粒界の構造を調査した純鉄を試料に、透過型電子顕微鏡と電子線損失エネルギー分光法を用いて局所的な磁気モーメントをナノスケール（ナノは10億分の1）で測定した。
　その結果、結晶粒界の局所磁気モーメントは、晶粒内の値と比較して上昇することが確認された。また、局所的な磁気モーメントの上昇度は、粒界の構造によって異なり、隣接する結晶同士の方位差（結晶の向きの違い）の増加に伴って磁気モーメントは上昇し、方位差が45度付近で最大になることも分かったという。
　これは局所磁気モーメントが粒界構造依存性を持つことを示しており、今回の実験結果は、磁性材料の特性の向上に向けた組織制御法に新たな指針を与える成果としている。

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