ダークマター粒子で宇宙進化を追う
―スパコン「京」で計算に成功
:筑波大学/理化学研究所/東京工業大学

 筑波大学は11月9日、宇宙に存在する物質のかなりの部分を占めるダークマターが宇宙誕生時にどう広がっていったかという重力進化をスーパーコンピューター「京」で計算することに成功したと発表した。約2兆個のダークマター粒子を対象に計算したもので、従来の1兆個規模を超える世界最大の重力進化シミュレーションという。スーパーコンピューターの計算速度は世界最高レベルの毎秒0.567京回を達成、米国で開かれた高性能計算技術に関する国際会議(SC12)の授賞候補にノミネートされた。
 筑波大計算科学研究センターの石山智明研究員を中心とする研究グループが、「京」を運用する理化学研究所や東京工業大学などの協力を得て計算した。
 宇宙には分子や原子など通常目にすることができる物質の約5倍に相当するダークマターが存在するといわれている。今回はこのダークマターを約2兆個の粒子からなると想定し、それらの粒子が137億年前の宇宙誕生後に互いの重力の影響を受けながらどのように広がっていくかを計算した。
 その結果、宇宙誕生から約200万年後ではダークマター粒子の分布はほぼ均等だったが、時間の経過とともにその密度分布には濃淡が生まれてきた。これらの濃淡が生まれた結果、宇宙には一定の重力構造が形成され、通常目にする物質粒子が集まって現在宇宙で観測される多種多様な銀河が生み出されたと考えられる。
 今回のシミュレーションでは「TreePM」と呼ぶ新しい計算手法を開発、これによってパソコン1台では数百年かかる宇宙の重力進化の計算が「京」ではわずか3日程度でできるようになった。研究グループは今後、他の計算手法とも組み合わせ、星や銀河の形成など宇宙の構造がどのように進化してきたかをさらに詳しく調べたいとしている。

詳しくはこちら

宇宙初期のダークマター密度分布。明るいところはダークマターの空間密度が高くなっている。これは、誕生から約1億年後、約136億年前の宇宙の姿を表しているという。