コメのカドミウム汚染を防ぐ遺伝子を発見
―通常の交配で簡単に導入でき、摂取量低減に役立つ
:農業環境技術研究所/東京大学

 (独)農業環境技術研究所と東京大学は11月5日、コメのカドミウム汚染を防ぐ変異遺伝子を発見したと発表した。この変異遺伝子は、通常の交配育種で導入でき、様々なイネ品種にカドミウムを吸収しない性質を持たせることができるため、コメを主食とする国々でのカドミウム摂取量低減に大きく寄与するとしている。
 発見したのは、土壌中に含まれる有害な重金属のカドミウムを、イネが吸収するのを抑える働きをする遺伝子。研究グループは今春、高速に加速したイオンを照射することによりカドミウムをほとんど含まないコシヒカリ(遺伝子が変異したコシヒカリ)を作り出すことに成功した。
 今回研究グループは、このコシヒカリ変異体がカドミウムを吸収しない原因を調査し、原因はマンガンや鉄、カドミウムなどを生体内に取り込むトランスポーターという膜タンパク質「OsNRAMP5」の遺伝子に変異が生じ、トランスポーターとしての機能が失われたことを解明した。
 この遺伝子変異により、イネの生育には必要のないカドミウムだけではなく、生育に必須の鉄なども吸収が抑えられるが、必須の金属元素は、ほかのトランスポーターによっても吸収されるためコメ中の濃度は維持されるという。
 研究グループは、この変異遺伝子の配列をもとに遺伝子マーカーを開発、変異配列を持つ個体を簡単に識別できるようにした。この遺伝子マーカーを利用すると、遺伝子組み換え技術を使うことなく、これまでの交配育種の手法によって様々なイネ品種にカドミウムを吸収しない性質を短期間で導入できるという。
 コシヒカリ変異体は、生育や姿、玄米の外観、収量、味などコシヒカリとほぼ同等で、これまでのような低カドミウム化のための土壌処理や水対策(湛水処理)も不要になるとしている。

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