安全性の高い全個体型のリチウム-空気電池を作製
―電気自動車用の高エネルギー蓄電池開発に光
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は11月5日、安全性や信頼性の高い全個体型リチウム-空気電池を開発したと発表した。電気自動車用の大型・高性能蓄電池開発への展開が期待できるという。
 開発したのは電解質や電極材料に液体や有機材料を用いず、無機化合物の固体だけで構成した新型電池。リチウム空気電池は、現在モバイル機器に広く用いられている高エネルギー密度のリチウムイオン電池に比べ、理論的にはさらに5~8倍もの重量エネルギー密度(重量当たり取り出せるエネルギー)が期待されている。
 しかし、これまでのリチウム-空気電池は電解質に有機電解液が用いられているため液漏れや揮発、発火などの懸念があった。また、有機電解液やバインダー(電極材料粉末を固定化する高分子)は充放電中に分解・反応してしまうことがあり、充電時と放電時の電圧差が大きかった。
 研究チームは今回、空気中で安定であり、比較的高いリチウムイオン伝導度を持つ無機化合物のLAGP(リチウム、ゲルマニウム、アルミニウム、リン、酸素から成る化合物)に着目、これを電解質として用い、空気極には固体電解質とカーボンナノチューブの混合焼結体を用いた全固体電池を作製した。
 実験の結果、放電は初期に約2.5Vの電圧を示し、放電が進むにつれ徐々に電圧は低下。充電は3.6V以上の電圧を要し、放電時の半分程度の容量が回復したという。これらの結果から、全個体型電池の常温・空気中での作動を確認、また、安全性が高く、これまで問題となっていた充放電時の電位差が大きいという課題を解決できる電池として有望であることが確認できたとしている。

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無機固体電解質を用いた新型リチウム-空気電池のイメージ図(提供:産業技術総合研究所)