酸素透過率を高める仕組み解明
―燃料電池向け材料開発で指針
:高エネルギー加速器研究機構/東京工業大学/九州大学など

 高エネルギー加速器研究機構と東京工業大学、九州大学、東北大学の研究グループは10月19日、高効率燃料電池の材料として注目される「プラセオジウム・ニッケル酸化物」が高い酸素透過率を発揮する仕組みを解明したと発表した。酸化物にガリウムと銅を添加することで、結晶格子の間に酸素原子が入りやすくなる現象などが起きて透過率が高くなることを突き止めた。今回の成果は、燃料電池向けの材料開発などを加速する指針になる。
 解明したのは、東京工業大学の八島正知教授と九州大学の石原達己教授らの研究グループ。ガリウムと銅を含むプラセオジウム・ニッケル酸化物が高い酸素透過率を示すことは八島教授が2年前に発見したが、その仕組みはよく分かっていなかった。
 そこで今回、高エネ研の大型実験施設である放射光施設や東北大学の高温中性子回析装置などを利用、プラセオジウム・ニッケル酸化物の酸素透過率や結晶構造が、ガリウムと銅を添加した場合としない場合でどのように違ってくるかを詳しく分析した。
 その結果、添加しなかった場合の方が、した場合に比べて酸素透過率が極端に低くなることがわかった。その理由として、添加した場合に大量の酸素原子が結晶格子の間に入ることを突き止めた。さらに理論計算で、ガリウムの添加によって酸素が格子の間に入ること、銅の添加によって格子上の酸素の位置がずれやすくなり格子間の酸素が安定化されることなども分かった。
 また、この酸化物を室温(20℃)から高温(約1000℃)に加熱することで格子の間にある酸素分布が格子上の酸素分布と連結し酸化物イオンの移動が起きることも確認、その原子核の密度が酸素透過率とともに増加することを明らかにした。
 研究グループは、今回の成果が「酸素透過率に優れたイオン伝導体の設計に新しいコンセプトを示すもの」として、高性能の固体酸化物形燃料電池に欠かせない、空気中から効率よく酸素を取り込む新材料の開発などにつながると期待している。

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