新しい層状超電導物質を発見、転移温度約10K
―ビスマス、硫黄主成分、高温超電導に新たな手掛かり
:物質・材料研究機構/産業技術総合研究所/首都大学東京/電気通信大学

 (独)物質・材料研究機構、(独)産業技術総合研究所、首都大学東京、電気通信大学の研究チームは10月18日、新しい層状超電導物質を発見したと発表した。層状の高温超電導物質としてこれまでに見つかっている銅酸化物系、鉄系とは異なり、ビスマス(Bi)、硫黄(S)を主成分とする物質系で、高温超電導の研究開発に新たな手掛かりが得られたとしている。
 発見した物質は、ビスマスと硫黄が二次元的に結合したBiS2層(超電導状態が発現する層)と、電気的に絶縁のブロック層とが交互に積層した層状化合物。二次元的な層状結晶構造は、低次元の電子状態を生じさせることから高温超電導などの特異な量子現象が現れることが知られている。
 研究チームは今回、ビスマス、酸素、硫黄から成る物質と、ランタン、酸素、フッ素、ビスマス、硫黄の組み合わせから成る物質系が、いずれもBiS2層とブロック層が交互に積層した結晶構造を持つことをX線回折などにより突き止めた。
 超電導状態になる超電導転移温度は、ビスマス・酸素・硫黄化合物が約5K(ケルビン:絶対温度の単位。1Kは-273℃)、ランタン・酸素・フッ素・ビスマス・硫黄系の一種が約10.6Kだった。代表的な高温超電導物質である銅酸化物系の超電導転移温度が最高140K弱、鉄系のそれが40K前後なので、発見された化合物の転移温度は高くないが、研究チームは、新物質の発見により高温超電導研究に新たな展開が期待されるとしている。

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