カーボンナノチューブを1000倍も高分散化
―配向・電気伝導性を制御できるイオン液晶との複合材開発
:筑波大学/理化学研究所/東京大学/東京工業大学

 筑波大学、(独)理化学研究所、東京大学、東京工業大学は7月31日、激しく凝集する性質を持つカーボンナノチューブ(CNT)を従来の1,000倍も分散化でき、加えてCNTの向きの制御で電気伝導性を2桁以上も変化させることができるCNT・イオン液晶複合材料を開発したと発表した。フレキシブルな材料からなる将来のソフトエレクトロニクスへの展開が期待できるという。
 CNTは、炭素原子でできた筒状のナノ構造体。従来の製法だとCNT同士が凝集して粉末状の塊を形成するため、CNTの特性を十分引き出せないという難点がある。研究グループの幾人かは、すでにイオン液体(陽イオンと陰イオンのみから成る常温で液体の物質)がCNTの分散に有効であることを見つけていた。研究グループは、今回、この成果を踏まえ、イオン液体よりもイオン化した部位が多いイミダゾリウムという分子が付いたイオン液晶(トリフェニレン誘導体)による分散化を試みた。
 実験ではトリフェニレン誘導体を150℃に加熱、液状にし、筒が一層の単層CNTを混ぜ合わせてCNT・イオン液晶複合材料を作製した。150℃で30分ほど撹拌したところ、黒いペースト状の混合物が生成、CNTの混合比を5~10%程度まで増やしても混合物の流動性が保たれた。これは、CNTが効率的に分散化していることを示しており、5~10%という値は従来の液晶の分散能0.01%以下のほぼ1,000倍に当たるという。
 混合物をさらに詳しく調べたところ、[1]CNTとの混合により液晶が垂直配向する[2]水平方向にすべらす剪断力(せんだんりょく)や加熱により液晶とCNTの配向方向を独立に制御できる[3]CNTの配向によっては電気伝導特性が2桁以上も変化する―などが明らかになった。
 CNT・イオン液晶複合材料は、フレキシブルで効率の良い電荷輸送を実現できるなどの特徴があることから、今後アクチュエーター(駆動装置)や光フィルターなど、新しい導電・光学材料としての応用が期待できるという。

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CNT・イオン液晶複合体の顕微鏡写真。CNTの塊などはほとんどなく、CNTはイオン液晶中に高分散化している(提供:筑波大学)