安全・高効率で細胞に遺伝子を導入できるナノシート開発
―遺伝性や難治性疾患などの細胞治療に期待
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は8月2日、動物細胞に特定の遺伝子を高い効率で安全に導入できるナノ構造のシートを開発したと発表した。遺伝子導入促進剤のいらない画期的な遺伝子導入法として、先天性代謝異常症、血友病などの遺伝性疾患、糖尿病などの難治性疾患の細胞治療への利用が期待できるという。
 開発した遺伝子導入法は、固体の表面にDNA(デオキシリボ核酸)を固定し、そこに動物細胞を接触させることでDNAを取り込ませる、いわゆる「固相トランスフェクション法」の一種。
 これまで固相トランスフェクションでは、遺伝子導入促進剤として動物由来のタンパク質であるフィブロネクチンという細胞外マトリックスなどを用いてきた。そのため、遺伝子導入された細胞を体内に戻すような臨床応用の場ではこれが安全性の面でハードルになっていた。
 研究チームは今回、無機物のシリカを用い、シリカ製シートの表面からナノスケールの壁が無数に垂直に突き出したナノシートを作製した。壁の厚みは5nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)で、このナノ構造シリカに遺伝子を高密度で固着させ、動物細胞を接触させたところ、極めて効率よく遺伝子を細胞内に導入できたという。
 動物由来の遺伝子導入剤が不要であり、遺伝子治療や細胞治療が必要な疾患の治療に貢献できる。また、ナノ構造シリカに多数のDNAを固定することで動物細胞にそれらを一度に導入できることから、遺伝子の網羅的解析やプロファイリングなどにも有効としている。

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