昆虫の「脱皮ホルモン」分解する酵素を発見
―脱皮・変態・休眠を操作、新農薬開発に期待
:農業生物資源研究所/筑波大学/名古屋大学

 (独)農業生物資源研究所は7月9日、筑波大学、名古屋大学と共同で、昆虫の脱皮などをコントロールしている「脱皮ホルモン」を分解する酵素を発見したと発表した。
 発見した脱皮ホルモン分解酵素は、「E220」といい、新しい農薬開発などへの利用が期待される。
 脱皮ホルモンは、昆虫をはじめとする節足動物(硬い殻と関節を持つ動物)が体内に持っているホルモンで、脱皮をはじめ、変態、休眠、生殖などを制御している。昆虫体内の脱皮ホルモンの濃度を人為的に高めることで昆虫の成長を操作する技術は、既に実用化されており、脱皮ホルモンと同じ働きを持つ合成化合物も殺虫剤として農業害虫の防除に使われている。
 しかし、昆虫体内の脱皮ホルモン濃度を人為的に下げることはこれまでできなかった。
 生物研は、カイコの疾病の一つ「緑きょう病」を起こすカビ「緑きょう病菌」が脱皮ホルモンを分解する酵素を分泌することを見つけ、筑波大、名大と組んでその酵素の特定に取り組み、「E220」を発見したもの。
 「E220」をカイコに注射すると、脱皮ホルモン濃度が下がって脱皮や変態がうまく進まなくなるほか、若いカイコの幼虫に注射すると脱皮回数が1回減る早熟変態が起きて小さなサナギになり、ガ、ハエ、カメムシなどの害虫類も「E220」を注射すると脱皮や変態が抑えられ、ガの一種の幼虫などは脱皮せずに何カ月も餌を食べず生き続けたという。
 生物研は、脱皮ホルモン濃度を下げる効果を持つ新農薬のほか、「E220」を使って有用昆虫に休眠を誘導し長期保存できるようにする、といったことも期待できるとみている。

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