短波長X線自由電子レーザーの光強度測定技術を開発
―実験中のリアルタイム測定が可能に
:産業技術総合研究所/理化学研究所/高輝度光科学研究センターなど

 (独)産業技術総合研究所、(独)理化学研究所、公益財団法人高輝度光科学研究センターは7月9日、ドイツ物理技術研究所、ドイツ電子シンクロトロンと共同で、短波長のX線自由電子レーザー(XFEL)の光強度を測定する技術を開発したと発表した。モニターを校正することで、実験を行っている最中の光強度をリアルタイムで測ることも可能になったという。
 X線自由電子レーザーは、文字通りX線のレーザー。加速器の中で電子を光速近くまで加速することで生み出される放射光を利用して発生させる。理研と高輝度研は兵庫県にある大型放射光施設SPring-8に隣接して、昨年、日本で初のX線自由電子レーザー施設「SACLA」を完成させた。
 SACLAは波長が0.1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下の極めて短波長のX線自由電子レーザーを放出できる。研究チームは今回、このレーザーの光強度(パルスエネルギー)の絶対値を測定できる極低温放射計という測定装置を開発した。
 極低温放射計は、液体ヘリウムで冷やした検出部にレーザーを導き、発生した熱エネルギーを電力に変換して光強度を計測するというもの。産総研は、2年ほど前に、検出部の吸収体に銅を用いて、極紫外自由電子レーザーの光強度を測定できる極低温放射計を開発した。今回研究チームは、これを金と銀の組み合わせに変え、X線レーザー用測定技術の開発に成功した。金と銀の吸収体は、ほぼすべてのX線を吸収でき、測定したパルスエネルギーを等価な電気エネルギーに変換できるため、絶対測定が可能な測定器という。
 X線自由電子レーザーを使う実験では、パルスエネルギーが少し異なると得られるデータが大きく異なることから、パルスエネルギーの正確な測定技術の開発が求められていた。ライフサイエンスやナノテクノロジーなどの分野でX線自由電子レーザーの本格的な利用が始まろうとしており、今回の成果はそうした研究開発への貢献が見込めるという。

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