廃プリント基板電子素子の選別・回収装置を開発―タンタルコンデンサーでは最大95%を達成
:産業技術総合研究所/日本エリーズマグネチックス

 (独)産業技術総合研究所と日本エリーズマグネチックス(株)は5月17日、廃プリント基板から電子素子を種類別に回収できる装置を開発したと発表した。管(カラム)の底から吹き上げる風の強さを変えて選り分ける工夫をしたのが最大のポイント。これまでほとんどリサイクルされていないタンタル(レアメタルの一種)を使用したコンデンサーを、最大95%の高精度で選別できたという。今年度中にタンタルコンデンサー回収プラントを稼働させる予定という。
 近年、プリント基板から電子素子を剥離する技術は、ほぼ確立されつつある。しかし、精錬所で処理する通常のリサイクル方法では、剥離された様々な電子素子の中に混在する多種類、低濃度のレアメタルを回収することは難しく、そのため電子素子の混合物の中から、重要なレアメタルを含む素子だけを選別・回収する技術の開発が求められていた。
 新選別システムは、傾斜面を転げ落ちる円筒形の素子と磁石に着く素子とをあらかじめ選別回収する「傾斜弱磁力磁選機」と、風の力を利用して比重の違う素子を分ける「複管式気流選別機」から成る。
 産総研が独自開発したメインの複管式気流選別機は、気流の風速が異なる2つのカラムで構成されており、高風速の第1カラムで高比重粒子を落下回収した後、中間・低比重粒子を浮上させた空気を排気せずに、そのまま粒子とともに第2カラムに供給。低風速の第2カラムで中間比重粒子を落下回収して、浮上した低比重粒子と選別する。
 さらに、この気流選別機には、粒子サイズと、中間比重粒子として回収したい電子素子の名前を選択・入力すれば最適選別条件で自動運転する制御機構が組み込んであり、望みのレアメタルの回収に照準を合わせることができる。
 タンタルコンデンサー回収試験では、電子素子混合物中に1~3%含まれるタンタルコンデンサーを80%以上という高い割合で回収できることが確認できたという。新選別システムは既に実用段階に入っており、今後はタンタルコンデンサー以外の電子素子の回収や、電子素子以外の廃製品からレアメタルを回収するプラントへの導入を検討したいとしている。

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90%近い高精度で選別されたタンタルコンデンサー(提供:産業技術総合研究所)