(独)産業技術総合研究所などの研究グループは4月18日、出力電流が均一なカーボンナノチューブ(CNT)トランジスタをプラスチックフィルム上に印刷する技術を開発したと発表した。 直径nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)単位の極微の中空構造を持つCNTは、次世代半導体材料として注目されているが、従来の印刷法では出力電流のバラツキを小さくするのが難しかった。新技術では、このバラツキを30%に抑えることに成功、フレキシブルな大面積デバイスなどの省エネ・低コスト製造に道が開けると期待している。 開発したのは、産総研と技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC、つくば市)と日本電気(NEC)の研究グループ。 現在のトランジスタは、ほとんどがシリコンを用いているが、CNTを用いると素子の小型化・高速化など大幅な性能向上が期待できる。印刷法によりフィルム上に回路を作れれば大面積デバイスが低コストで作れるため、技術の確立が期待されていた。 しかし、従来はトランジスタを作るためにCNTの薄膜を印刷すると、テーブルに垂らしたコーヒーの滴の跡がリング状に外縁部だけ濃く残るように不均一になるという問題があった。これがトランジスタ特性を悪くする原因になっていた。 研究グループは、印刷面に予めCNTを吸着する性質を持つ特殊な材料の単分子膜を作っておくことで、CNTが均一に印刷面に形成できることを突き止めた。さらに、金属の性質を示すタイプと半導体タイプが混ざっているCNTから半導体タイプを分離、純度95%以上の半導体型CNTを用いて出力電流のバラツキを抑えた。このほか、CNTインクに含まれる電気抵抗の高い界面活性剤を印刷後に除去する技術も開発、デバイスの動作速度を従来の40倍に高めることに成功した。 研究グループは、今回の成果について、フレキシブル・大面積デバイスへの応用につながるとしている。
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プラスチックフィルム上に印刷したCNTトランジスタアレー(提供:産業技術総合研究所) |
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