新設ビームラインへの中性子ビーム導入に成功
:高エネルギー加速器研究機構

 高エネルギー加速器研究機構は2月28日、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設(J-PARC)に新設したビームライン「特殊環境解析装置(SPICA)」に中性子ビームを導入することに成功したと発表した。
 再生可能エネルギーや電気自動車普及の鍵を握る蓄電池材料の原子レベルでの分析に取り組むのが狙いで、今後、高温・低温・電場・ガス中などの特殊環境下に置いた電池材料に中性子を照射して分析できるよう装置の整備を進める計画だ。
 特殊環境解析装置の開発を担当したのは、同機構の物質構造科学研究所。蓄電池の性能向上に欠かせない材料開発を進めるため、中性子ビームの高い透過性を利用して材料の原子配列を調べ、構造や組成を分析する。
 特殊環境解析装置は、高性能蓄電池材料のリチウムなど軽い元素を効率よく調べられる中性子ビームラインで、さまざまな特殊環境下にある材料をそのまま分析できるため、蓄電池材料の有力な研究手段として期待されている。
 特殊環境解析装置が建設されたJ-PARCは、複数の大型陽子加速器を組み合わせて光速近くまで陽子を加速、世界最高クラスの大強度陽子ビームを発生させる大型実験施設。今回、特殊環境解析装置内に導入した中性子ビームは、この陽子ビームを標的物質に当てたときに発生する中性子を利用したものだ。
 J-PARCは、大強度の陽子ビームを素粒子や原子核、物質科学、生命科学などの幅広い分野の研究に利用するために、高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構が共同で2008年に第一期施設を完成させた。J-PARCは、大型陽子加速器を中心に複数の研究施設で構成されているが、特殊環境解析装置はそれらの研究施設の一つである物質・生命科学実験施設に設置される21の実験装置の一つ。

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