熱帯雨林の代表樹「セラヤ」の繁殖特性を解明
:国際農林水産業研究センター

 (独)国際農林水産業研究センターは2月28日、熱帯雨林を構成する樹木の内のフタバガキ科の代表樹種「セラヤ」の繁殖特性を遺伝子解析手法などを用いて解明したと発表した。
 「セラヤ」は、南洋材ラワンの代表的な樹木。マレーシアの林業では、幹径が一定以上の木だけを切る択伐法により木材を収穫しているが、その方法では健全な苗がなかなか育たず、樹種の更新が難しいという問題を抱えている。
 研究チームは、マレーシア森林研究所と協力し、マレーシア半島部にあるセマンコック試験地と呼ばれる地域で丘陵フタバガキ林の「セラヤ」の繁殖特性を調べた。ここでは、1998年と2005年に大規模な一斉開花、2002年に小規模な一斉開花があった。その時に採集した計約1,500個の種子を用い、木と種子の親子関係を遺伝子解析で調べ、花粉散布距離(花粉親と種子を採集した木の距離)を割り出したところ、平均距離は約60mと、試験地の他の樹種に比べ非常に短いことが判明した。
 樹木のサイズと花粉親としての貢献度(種子に貢献した花粉生産量)との関係を調べた調査では、択伐後に残される幹径50cm以下の小径木はほとんど花粉を生産していないことが分かった。
 択伐により、成熟した個体の密度が低下し、花粉が他の個体まで到達しない可能性が高いうえ、残された個体では花粉生産量が低く、健全な種子を生産する他殖(自己の花粉ではなく、他の木の花粉を受粉し生殖すること)が行われにくい可能性が明らかになったという。
 これらのデータをもとにシミュレーション実験した結果、幹径70~90cmの個体を残すと効率よく他殖を維持できることが推定されたという。熱帯林業経営の持続性の向上に貢献できる成果が得られたとしている。

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