(独)産業技術総合研究所は2月27日、テレビの表示装置などに広く使われている液晶をしわ状の微細な溝の中に閉じ込めると、これまでにない周期的な配向構造が自律的に形成されることを発見したと発表した。
物質が自発的に特定の構造をとる「自己組織化」と呼ばれる現象によるもので、新しい光学素子などへの応用が期待できるという。微細化の限界が近いとされる電子素子の加工技術などにも新しい道を開く成果と期待している。
液晶は、分子の並び方(配向)によって光の透過度が変化、液晶テレビはこの性質を利用して画像を映し出している。液晶分子の配向は、液晶を応用する際に重要な要素になっている。
今回の実験では、まずシリコーンゴム表面に硬いポリイミド薄膜を付けて一方向に圧縮、その時ゴム表面にできるしわ状の溝に液晶をハケで塗った。溝は、数~数十μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)間隔で一方向に並ぶが、塗られた液晶分子は溝の中で特殊な配向構造を示した。
具体的には、溝の底面では溝の方向を向きながら底面に寝るような形になっていた分子が、溝上部で空気と接する表面に近づくにつれて表面と垂直方向に立ち上がり、さらに溝の方向と垂直向きに徐々にねじれていた。また、溝に液晶を塗る時に液晶に直径約0.5μmのシリカ(酸化ケイ素)微粒子を混ぜておくと、シリカ微粒子が一定間隔で周期的に配列することなども分かった。
このため、同研究所は「液晶の自己組織化に基づいたシリカ微粒子などの微小物体の光学素子などへの応用展開が期待できる」としている。今後は、溝の形状を変化させたり電場や磁場をかけたりすることで液晶の配向構造を制御するなどして、より複雑な規則構造の形成などに取り組む。
No.2012-9
2012年2月27日~2012年3月4日