筑波大学、電気通信大学、(独)科学技術振興機構(JST)は3月2日、光通信の次世代基盤技術として注目されている「周波数コム」開拓の手がかりとなる新技術を開発したと発表した。原子の集団振動であるフォノン(格子振動)を操作する技術を開発し、100テラヘルツ(テラは、1兆)以上の極めて広い周波数帯域を持つ、新しい原理に基づく「周波数コム」の発生と観測に成功したという。
周波数コムは、櫛(コム)の歯状に等間隔にピークが並ぶスペクトルのこと。ピークを持つ周波数の間隔が精密に等間隔に配列されていることから、通信をはじめ計測や医療など幅広い分野での応用が期待され、近年基礎研究が盛んになっている。
研究チームは、光通信の高速化、大容量化、高安定化を念頭に、固体結晶中の格子振動(フォノン)を発生原理とするテラヘルツ帯域の周波数コムの研究に取り組み、これまでは困難とされていたフォノンを操作する技術(大振幅のコヒーレント光学フォノンの励起)の開発に成功した。
具体的には、波長約400nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の極短パルスレーザー光を半導体シリコンに照射、吸収させ、大振幅のコヒーレント光学フォノンを励起した。
また、このコヒーレン卜光学フォノンに伴うシリコン表面の屈折率変調を光変調技術として利用することにより、間隔が15.6テラヘルツの櫛状で、かつ100テラヘルツ以上の広帯域を持つ周波数コムの発生を世界で初めて実現した。
ここで得られた周波数コムは、従来から知られている光周波数コムではなく、フォノン周波数として現れることから「フォノン周渡数コム」とも呼べる新しいタイプのものという。このフォノン周波数コムを光ファイバーに結合することができれば、従来の光通信よりも1,000倍以上高速な情報伝送が可能になるとしている。
No.2012-9
2012年2月27日~2012年3月4日