電子顕微鏡の分解能1ケタ上げる電子源に目途
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は9月7日、電子顕微鏡の分解能を1ケタ高めることが可能な高性能電子源の実用化に目途をつけたと発表した。
 この成果は、(独)科学技術振興機構の開発課題として同機構が取り組む「ナノ構造制御LaB6(6ホウ化ランタン)次世代電界放射電子銃の開発」で得られたもの。今後、(株)日立ハイテクノロジーズと共同でこの新電子源を透過型電子顕微鏡に装着して分解能アップを確認する計画という。
 日本製電子顕微鏡は、かつて世界一の座にあったが、今では米国、ドイツにその座を奪われている。同機構は、その座奪還を目指して高性能新電子源の開発に取り組んでおり、ナノワイヤーと呼ばれる直径が50nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)オーダーの超微細な6ホウ化ランタン単結晶を使ってその目途をつけた。
 同機構は、米国のノースカロライナ大学と共同で6ホウ化ランタン単結晶のナノワイヤーを作ることにすでに成功していたが、それを電子源にするには表面の清浄化と特性の安定化という難しい課題が残されていた。
 今回、その6ホウ化ランタン単結晶ナノワイヤーに水素ガスや窒素ガスをイオン化してぶつけ表面の清浄化を可能にすると共に、不可能だった単結晶成長面の制御を実現、劣化の少ない高性能電子源を作ることに成功した。同機構は、現在最高のタングステン製電子源より10倍以上高輝度の電子源が期待できると見ている。

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6ホウ化ランタン単結晶ナノワイヤー製電子源先端部の電子顕微鏡写真(提供:物質・材料研究機構)