(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業㈱は9月11日、我が国初の準天頂衛星「みちびき」を同日午後8時17分、同機構種子島宇宙センター(鹿児島県)から「H-ⅡA」ロケット18号機で打ち上げたと発表した。「みちびき」は、約29分後に分離され、ほぼ計画通りの初期軌道に乗った。「みちびき」は、断続的に少しづつ軌道を変え、高度約33,000~同39,000㎞、傾斜角約40度、周期約24時間の準天頂軌道に乗せ、機能確認後、12月から実験を開始する予定。 準天頂衛星システムは、静止衛星と周期が同じ複数(最低3機)の移動衛星を互いに軌道傾斜面を違えて配置する。こうすると、それぞれの衛星は、日本とオーストラリア間を「8の字」を描くように飛ぶ。さらに数字の「8」の中心位置が日本上空になるように調整すると、日本近辺で天頂(頭上)付近に常に1機の衛星が見られるようになって、山間地やビルの谷間などに影響されずに、日本全国をほぼ100%カバーする高精度の衛星測位サービス提供が可能になる。 JAXAは、準天頂衛星システム開発の第1段階として、カーナビなどに広く利用されている米国のGPS(全地球測位システム)同様の測位信号発信機器を衛星に搭載するなどして、GPS利用可能地域の拡大や利用可能時間の拡大、測位情報の高精度化・高信頼性化を図る技術を実証することにしている。たとえば、全国約1,240カ所の電子基準点でGPS電波を受信して種々の誤差を補正、その補正情報を「みちびき」経由で配信することで、現在は約10mのGPSの測位誤差を数cm~1mに縮める。 こうした高精度の測位情報を活用して、▽児童の登下校見守りシステム、▽無人農機運転システム、▽位置情報と連携した観光案内システム、▽山林境界の精密測量、など58件の実証実験を民間企業や大学など101の機関が年末には開始する。 これらの結果を評価した上で、初号機を含めた3機の準天頂衛星による国内を対象とした測位衛星システムを実証する第2段階へ進むことになっているが、2号機を何時打ち上げるかなど詳細は未定。 「みちびき」の衛星本体は、高さ6.2m、幅3.1m、奥行き2.9mの箱形で、大きな2翼式太陽電池パドルを付けている。打ち上げ時重量は、約4t。寿命は、10年余。開発費は、約735億円。 世界の測位衛星システムは、米国のGPS以外にロシアが「GLONASS(グロナス)」を運用し、中国が「COMPASS(コンパス)」を試験的に一部運用しているほか、欧州も実験衛星を打ち上げている。
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準天頂衛星「みちびき」を搭載して上昇する「H-ⅡA」ロケット18号機(上)と、軌道上の同衛星のイメージ図(提供:宇宙航空研究開発機構) |
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