九州で最後に捕獲されたツキノワグマは本州由来だったと発表
:森林総合研究所

 (独)森林総合研究所は9月6日、九州で1987年に捕獲された最後のツキノワグマは、遺伝子解析の結果、九州産のツキノワグマではなく本州由来であったことが判明したと発表した。これにより九州産ツキノワグマの確かな情報は、1957年の死体での確認までさかのぼることになり、「約50年間信頼できる生息の情報が無い」という国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅の基準」に適合するという。
 森林総研によると、九州産のツキノワグマは1941年に成体のオスが捕獲され、1957年に幼体の腐乱死体が発見された。その後、1987年に大分県で4歳のオスが捕獲され、30年ぶりに生息が確認されたとされていた。環境省および日本哺乳類学会のレッドデータブックは、これをもとに現在、九州産ツキノワグマを絶滅の恐れのある地域個体群と指定している。
 日本全国のツキノワグマの遺伝子を調査している森林総研は今回、大分県で捕獲されたこのクマの標本から遺伝子を取り出して塩基配列を調べたところ、このクマは福井県から岐阜県にかけて局所的に分布している遺伝タイプを保持していることが判明した。日本のツキノワグマは、6万年以上前に琵琶湖以東に棲む東日本グループと、以西に分布する西日本グループに分かれ、両グループ間での遺伝子の交流はその後ほとんどないと考えられている。今回確認された遺伝タイプは、東日本グループに属する。これが中国地方を飛び越えて九州に存在することは考えられないため、1987年に捕獲されたのは九州産ツキノワグマではなく、福井・岐阜周辺で捕獲されて持ち込まれたか、その子孫に当たる本州由来のものと結論付けた。
 「確かな最後の情報は53年前の1957年」とするこの調査結果は、次回のレッドデータリストの見直しに反映されると森林総研では見ている。

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