(独)農業・食品産業技術総合研究機構は8月31日、水稲の簡易で低コストな直播(じかまき)技術を開発したと発表した。 水田で作る稲(水稲)は、古くから苗を育て(育苗)それを水田に植える(田植え)という方法で栽培されてきた。それに対し、育苗を行わず水田に直接種子をまく栽培法が直播。 直播は、育苗作業と田植え作業が不要なことから生産コストを低減できるメリットがあるが、直播栽培の普及面積はまだ水稲作付面積全体の1%余りにすぎない。 普及しない最大の理由は、出芽しても途中で枯れてしまう不安定さがあるからで、その改善策として種子に酸素発生剤を被覆する方法が開発されているが、酸素発生剤のコストが高いという課題を抱えている。 新技術は、種子に植物の微量要素として知られるモリブデン化合物をまぶして直播するという方法。直播で、出芽した苗が枯れてしまうのは、有害な硫化物イオンが水中に発生するからだが、モリブデン酸イオンで硫化物イオンの生成を抑制する仕組み。 モリブデン化合物は、種子に少量まぶすだけで効くため、コストを酸素発生剤を使う従来法の10分の1程度に低減でき、処理もまぶすだけなので簡単という。 モリブデンは、これまでも肥料に添加して使われているが、今回の方法を実用化するには改めて農薬登録が必要なことから、それに必要なデータが得られるようこれから関係機関に働きかけていきたいと同機構はいっている。
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モリブデン化合物をまぶした種子の効果(右)。左は、無処理の種子(提供:農業・食品産業技術総合研究機構) |
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