(独)物質・材料研究機構は8月30日、資源的に希少な希土類元素(レアアース)であるジスプロシウムを用いずにネオジム磁石の原料粉の性能を高める方法を開発したと発表した。
通常のネオジム磁石(ネオジム・鉄・ホウ素を主成分とする磁石)では、温度上昇に伴い、保磁力と呼ばれる磁石特性が低下する。そのため、磁石の温度が200ºC程度まで上がるハイブリッド車などの駆動部には、そのままでは使えない。
その対策として、ハイブリッド車などの駆動モーターには、ネオジムの40%をレアアースの一種であるジスプロシウムで置き換えた高価で高性能なジスプロシウム含有ネオジム磁石が使われている。
しかし、ジスプロシウムは、ネオジムの10%程度しか地球上に存在せず、しかも90%以上が中国で産出されている。このような事情から、大量供給が必要となる磁石では、ジスプロシウム量を少なくとも10%以下に削減することが求められている。
その削減法としては、磁石の表面からジスプロシウムを結晶と結晶の界面(結晶粒界)に沿って拡散させて、結晶粒界の保磁力を強化する「拡散法」が知られているが、量は削減できても、ジスプロシウムをゼロにはできない。
同機構は、ネオジム磁石の保磁力を、結晶間の磁気的な結合を切ることにより強化できることを見つけ、「拡散法」に応用することを試みた。
ネオジム磁石粉に低融点のネオジム・銅合金を加え、結晶粒同士の結晶粒界に沿って拡散させた。その結果、ネオジム・銅合金の拡散が、結晶粒同士の磁気的な結合を切り、保磁力が20%も高まった。
同機構は、この新開発の方法で作ったジスプロシウムを含まない原料粉でハイブリッド車や電気自動車用に使える緻密焼結体磁石の実現を目指すことにしている。
No.2010-34
2010年8月30日~2010年9月5日