(独)産業技術総合研究所は8月30日、水素と酸素の電気化学的反応によって電気を生み出す燃料電池内部の酸素イオン分布を可視化する技術を開発したと発表した。酸素のイオン化が活発な部分を特定したり、酸素イオンの濃度分布を捉えたりすることができるため、高性能な燃料電池の設計や電池の劣化の解明、克服などに役立つという。
開発したのは、据え置き型燃料電池として期待されている「固体酸化物型燃料電池(SOFC)」を対象とした技術。SOFCは、主にセラミックスでできており、600ºC以上で作動する。イオン化した酸素分子が固体電解質中を拡散して燃料極側に達し、そこで燃料の水素と反応して電気と水を発生する仕組みだ。
SOFCの高性能化には、酸素のイオン化と酸素イオンの拡散に伴う反応抵抗の低減が重要とされているが、これまでは間接的な方法で酸素や酸素イオンの動きを推定していた。
同研究所の研究グループは今回、酸素の同位体(酸素-18)をラベル元素として使用し、「SIMS」と呼ばれる質量分析計で酸素イオンなどを直接捉え、可視化する技術の開発に成功した。
同研究所は、この可視化技術を使えば酸素のイオン化反応活性サイトを特定したり、酸素イオンの拡散による濃度分布などが把握できることから、SOFCの高性能化が期待できると見ている。
No.2010-34
2010年8月30日~2010年9月5日