(独)産業技術総合研究所は8月26日、名古屋大学、竹田印刷(株)と共同で紙に撥水性と抗菌性を付与する新技術を開発したと発表した。 パルプから作られる紙の弱点は、水に弱いこと。新技術は、紙の表面だけでなく紙を構成する繊維の一本一本を撥水化でき、さらに抗菌性にすることができる。経済産業省の地域イノベーション創出研究開発事業のテーマとして行われた「よごれガード超撥水ナノ分子ペーパーの開発」で得られた成果で、屋外ポスター、屋外広告、カレンダーなどへの利用が期待される。 撥水性のある紙としては、合成紙があり、屋外ポスターや屋外広告など撥水・耐水性が求められる分野に広く使われているが、原料がポリプロピレン樹脂なのでリサイクルできず、使用後は焼却処理されている。新技術を使えばリサイクル利用できる撥水性の普通紙を実現できる。 新技術は、粒径がnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)オーダーの抗菌性と防汚性を持つナノ粒子と、「自己組織化単分子膜(SAM)」と呼ばれる疎水性のnm膜を含む水溶液を紙繊維の親水性を利用して紙の内部にまで浸透させ、紙繊維一本一本の表面にナノ粒子とSAMを固定するというもの。 紙の表面に薄膜を形成する撥水表面処理は、これまでもあったが、新技術は最表面だけでなく、一本一本の紙繊維全てを撥水化できるのが最大の特徴で、処理した紙は抗菌性、防汚性も示す。 量産性にも優れ、「A2サイズ」(420×594mm)を1時間当たり1,000枚のスピードで処理できるという。
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新技術で撥水性にした紙の上の水滴(提供:産業技術総合試験所) |
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