RNAの複製に欠かせないタンパク質複合体の構造を解明
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は8月24日、様々な病気の原因となるRNA(リボ核酸)ウイルスが宿主細胞の中で増殖する仕組みの一端を分子レベルで明らかにしたと発表した。大腸菌に感染するRNAウイルスとその宿主である大腸菌が持っているタンパク質の複合体の構造を世界で初めて解明し、ウイルスのRNAが複製・転写される仕組みなどを明らかにした。同研究所は、今回の成果によって新たな抗ウイルス薬の開発に道が開けると期待している。
 解明したのは、同研究所バイオメディカル研究部門の富田耕造・RNAプロセシング研究グループ長ら。実験では、RNAウイルスとして「QBウイルス」(大腸菌に感染して増えるウイルスの一種)を用いた。これは、一本鎖RNAをゲノム(全遺伝情報)として持ち、大腸菌内で増殖するにはウイルスがもともと持っているRNA合成酵素と、大腸菌が持っている翻訳因子と呼ばれる2種類のタンパク質の、合計3種類のタンパク質が複合体を形成することが不可欠とされている。このため研究グループは、X線結晶解析などの手法を用いてこの複合体の構造や機能を詳しく調べた。
 その結果、複合体は、3種類のタンパク質が1対1対1の割合で結合し、ボートのように中央がくぼんだ形をしていることが判明。タンパク質は、互いに「疎水的な相互作用」と呼ばれる力で結びつき、それによってRNAの複製・転写に必要なRNA合成触媒中心が維持されていることが分かった。この相互作用を壊すと複合体が形成されにくくなるため、ウイルスの増殖を阻害する新しい抗ウイルス薬の開発につながる可能性もあるという。
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