ナス科植物に重大な病害を起こす植物病原ウイロイドの新検出法を開発
:中央農業総合研究センター/花き研究所

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の中央農業総合研究センターは8月26日、同機構の花き研究所と共同で、我が国が植物検疫で特に侵入を警戒する植物病原体「ポテトスピンドルチューバウイロイド(PSTVd)」の新たな検出法を開発したと発表した。
 PSTVdは、ナス科植物(ばれいしょ、トマト等)を中心として様々な植物に感染し、ばれいしょでは やせイモ症状、トマトでは黄化・葉巻症状などを引き起こす病原体。特にばれいしょ の収量を著しく減少させることから我が国への侵入が警戒されている。また、PSTVdと近縁種の「トマト退緑萎縮ウイロイド(TCDVd)」は、1999年に初めてカナダで発生が確認され、やはり我が国への侵入が警戒されている。
 PSTVdについては、これまで世界各国で多くの系統が報告されているが、これを一度に検出する方法はなかった。また、PSTVdとTCDVdを区別せずに検出する方法や、それぞれを別々に検出する方法はあったが、両者の識別ができなかったり、作業工程が多いことや時間を必要とするなどの問題点が色々あった。
 今回の研究では、1回の操作でPSTVdの全系統を検出でき、かつPSTVdとTCDVdを識別できる新たな検出方法の開発に取り組んだ。
 PSTVdとTCDVdのゲノム(全遺伝情報)の配列(約300塩基)の違いに着目して、5種類のプライマー(化学合成した短いDNA(デオキシリボ核酸)の断片)を選んで試料とし、「マルチプレックスPCR」と呼ばれる方法によってDNAを増幅した。さらに、PCR反応の終了後に反応液を調べ、PSTVdが陽性(感染)であれば271塩基のDNAの断片が、TCDVdが陽性(感染)であれば191塩基のDNA断片がそれぞれ検出され、また、両方のウイロイドに感染していた場合には、両方のDNA断片が検出される方法を開発した。
 新たに開発した方法により、PSTVdの全系統を1回の操作で簡単に検出できるようになった。また、PSTVdと識別が困難であった近縁種のTCDVdも識別することができるようになった。
 農林水産省では、今年2月に国内で試験的に栽培中のダリア苗で確認されたPSTVdの感染経路を特定するため調査を実施しているが、同機構では、新しい検出法を提供するなど全面的に協力している。

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