電気と水素が同時に作れるシステムの実証実験に成功
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は5月14日、金属リチウムの負極(マイナス極)と炭素の正極(プラス極)の間にハイブリッド電解液を充たし、リチウム・水電池のように電気を得ると共に水素を製造するシステムの実証実験に成功したと発表した。
 ハイブリッド電解液は、負極側を有機電解液、正極側を水性電解液、その間にリチウムイオンだけ通す固体電解質をセパレーターとして配置した構造の電解液。
 リチウム電池の研究開発を進めてきた同研究所は、リチウム・空気電池やリチウム・銅二次電池に用いたハイブリッド電解液を活用したリチウムと水の電気化学反応に注目、エネルギー需要に応じて発電しながら水素製造するという新コンセプトのシステムを考案、今回システムとして実証することに成功した。
 新システムは、一種のリチウム・水電池で、リチウムと水の電気化学反応に伴う放電で電気を発生すると同時に次代のエネルギーである水素を必要な時に必要な量だけ製造できるのが特徴。
 負極では、金属リチウムが電子を放出、リチウムイオンになって有機電解液に溶解、電子が配線を通って正極に流れて行く。一方、発生したリチウムイオンは、固体電解質を通り抜けて正極側の水性電解液に移動する。正極では、配線を通って供給された電子で活物質の水が分解し、水素が発生するという仕組み。水素の製造速度は、放電電流量で調整する。
 このシステムは、放電の逆の充電で水酸化リチウムを回収できるため、夜間の余剰電力などをリチウムの形で貯蔵し、需要に応じて水素と電力を取り出すことも可能だ。
 このシステムの現時点の水素製造量は、電流密度1cm2当たり12mAで炭素正極1cm2当たり毎時5.2mℓだが、セパレーターのリチウムイオン伝導率を上げ、作動温度を高くすることで水素製造能力を数十倍にアップできるという。
 同研究所は、実用化に向け耐久性の改善を進めると共に、電気と水素が同時に供給できること、充電反応でリチウム再生ができることなど、このシステムの特徴を将来のエネルギー技術体系の中でどう生かして行けるか、更に検討を続ける。
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