次世代メモリーの大容量化にメド
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は5月13日、次世代の不揮発性メモリーと期待される「スピンRAM」の記憶容量をこれまでのメガ(100万)ビット級からギガ(10億)ビット級に高める技術を開発したと発表した。記憶素子となる垂直磁化方式のトンネル磁気抵抗(TMR)素子の製造技術を改良して実現した。
 スピンRAMは、「スピン注入型磁気抵抗ランダムアクセスメモリー」の略称。TMR素子を用いたスピンRAMは、記憶保持に電力を使わず、高速、高書き換え耐性などの特徴を持つRAM(随時書き込み読み出しメモリー)で、これまでに数メガビット級から数十メガビット級が試作されているが、現在コンピューターに使われているDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)に換わるにはギガビット級の出現が望まれている。
 それには、大きな出力信号を得るための高い磁気抵抗(MR)比と、周辺回路との整合をとるための低い素子抵抗(RA)値の両立が必要とされるが、これまでそれができなかった。
 垂直磁化TMR素子は、トンネルバリアーとなる厚さが1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)ほどの酸化マグネシウム層の上のテルビウム・鉄・コバルトの垂直磁化電極層と界面層、下のコバルト・白金の垂直磁化電極層と界面層で構成される。底の基板面に対し、垂直方向に磁化する上下の電極層の磁化の向きが同じか、逆向きかで電気抵抗が大きく異なり(この抵抗変化率がMR比)、これで情報を記憶する。
 2008年に東芝と共に垂直磁化TMR素子を用いたスピンRAMを世界で初めて試作した産総研は、今回、酸化マグネシウム層と下側の垂直磁化電極層表面の超薄膜を原子レベルで均一に平坦化する技術開発に成功した。
 さらに、結晶性のコバルト・鉄合金とアモルファス合金のコバルト・鉄・ホウ素合金を組み合わせた界層面を新たに開発、この2つの新開発でギガビット級スピンRAM実現に必要とされるMR比と低RA値を達成、これで記憶容量5ギガビット以上のスピンRAMの回路設計が可能になった。
 同研究所は、今後この技術をベースにさらに高いMR比の実現に努め、大容量スピンRAMの量産化技術確立を目指す。

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